インタビュー

セミナー講演者インタビュー

東京大学 大学院 工学系研究科
建築学専攻准教授
博士(工学)、一級建築士
松田 雄二氏

松田先生顔写真松田准教授は、視覚障害者の歩行環境、重度重複障害者の地域環境、福祉施設の計画など、幅広くフィールドワーク、ワークショップを実践され、これからの建築計画学を担う研究者として、とても注目されています。
今年、4月に施行された「障害者差別解消法」に先駆け、2020年オリンピック・パラリンピック競技大会に向けてアクセシビリティ協議会の作業部会のメンバーでもある視点からお話を伺いました。

私は、建築や都市空間がどのようにユーザーのニーズを受け止めているのか、そもそもユーザーのニーズはどのようなものなのか、実際の場面において確かめることを目的として研究を行っています。
現代の日本は高齢化の急速な進展や止まらない少子化の進行などに象徴されるように、社会が劇的に変化しています。そのなかで、これまで「あたりまえ」のものとされてきたユーザー像が極めて多岐にわたり、また、わかりにくくなっています。
このような多様化するユーザー像や施設に求められる要件を再定義し、結果として各種施設に求められる建築計画の姿を明らかにしていきたいと思い、医療・福祉施設の計画や視覚障害者の歩行環境、重度障害者の住宅ユニバーサルデザインの研究を行っています。

多様な活動のなかでひとつだけ変わらないのは、「使い手の視点にたつ」ということに重点をおいていることです。
そのためにも使い手の話を聞き、動作や環境を観察し、社会的な手法から心理学的な手法、そして、建築計画的な手法を用いながら、日々、そのフィールドに立ち、幅広くワークショップなども行いながら、研究を行っています。

現代の企業はすぐれたシーズ(技術)をいくつも持たれていると思いますが、他方でユーザーのニーズについては、残念ながら充分な知見を持たれていないように感じています。結果として、「多様化するユーザーのため」の商品や技術に対し、狙いとしているユーザー像や使いやすさの面で疑問を感じることが多々あります。また、ユーザーの観察にはノウハウが必要ですが、その習得は簡単ではありません。
ユニバーサルデザインやインクルーシブデザインと言った手法を活用することで、企業はユーザーの真のニーズを見つけやすくなります。
今回のセミナーでは、実際の具体例を交えながら、「豊かな社会」をつくるユニバーサルデザイン、インクルーシブデザインについてお伝えします。

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「リードユーザー・イノベーション」セミナー
日程:2016年5月17日(火)13:00〜17:30
会場:ソラシティカンファレンスセンター ルームC(御茶ノ水)
定員:100名(50社)
受講料:一般:32,000円(税込) ※1社あたり2名まで参加可能です

セッション1では「企業リスクとチャンス」「障害者差別解消法」とはを掘り下げ知識を得ます。
セッション2では、「企業チャンスにどのようなイノベーションが生まれる可能性があるのか」を具体的な企業事例などでご紹介させていただき、実践に向けた理解を深めます。
セッション3では、会場の各グループのリードユーザと共にインクルーシブデザインワークショップ体験や意見交換を行うことで自社に当てはめた具体策を持ち帰っていただきます。
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第2回みんなでつくるまちづくり推進協議会勉強会

第2回みんなでつくるまちづくり推進協議会勉強会

真夏の日差しが照りつける日々が続いておりますが、みなさまにおかれましてはいかがお過ごしでしょうか?「みんなでつくるまちづくり推進協議会」主催の第2回勉強会を、下記の通り、開催いたします。
この協議会ではハード・ソフト・そしてITのユニバーサルデザインの確立とそれらの連携こそが大切だと考えております。今回は多様な人が安心して楽しく暮らすための情報発信、コミュニケーションのあり方について考えるきっかけとなるよう、ウェブアクセシビリティについてお話を伺います。個人・学生・企業・団体問いません。ご興味ご関心のある皆様、お誘いあわせの上ご参加下さい。

『みんなでつくるまちづくり推進協議会』
松村道生

日 時:2015年9月4日(金) 19:00〜21:00
会 場:みんなでつくるまちづくり推進協議会
            千代田区有楽町1 – 6 – 6 小谷ビル2階
参加費:500円
講 師:伊敷 政英 総務省ウェブアクセシビリティ基盤委員会副委員長、      
            Cocktailz代表 みんなでつくるまちづくり推進協議会
交流会:勉強会終了後に交流会を予定しております(会費1,000円)


あなたの想い、伝わっていますか?
?製品・サービスの魅力を多様な人へ届けるために?

開 会:挨拶 松村道生  みんなでつくるまちづくり推進協議会の目的と活動内容まちづくり風景

第1部:基調講演 伊敷政英
「ウェブアクセシビリティって何?」
・日々変化する多様な人々へ対応するウェブサイトとは何か
・これから必要なウェブアクセシビリティの基本
「これからのwebの成功とリスク、その時、あなたのホームページは大丈夫なのか?」
・ウェブアクセシビリティの成功事例
・シドニーオリンピック「IOCウェブアクセシビリティ訴訟」から学ぶ自社ホームページに潜むリスク

第2部 :ワークショップ  5人1グループで
「ウェブの魅力とアクセシビリティの向上のための方法論と実践」
・自社ホームページのアクセシビリティチェック
・リードユーザによる自社ホームページのウェブ利用の視点を観察
・見過ごしている自社ホームページのアクセシビリティリスクの理解
・自社ホームページのアクセシビリティの向上に向けた項目出し

◯今後の勉強会開催予定
第3回 10月2日(金) 19:00〜21:00
第4回 11月6日(金) 19:00〜21:00
第5回  1月8日(金) 19:00〜21:00
第6回  2月5日(金) 19:00〜21:00

◯今後の勉強会内容 ※内容は変更となる場合がございます
・障碍者差別解消法を学ぶ
→国際弁護士をお招きして法律の理解と次の一手を学びます
・テレビや映像のアクセシビリティ
→WAIC担当者より最新の情報を学びます
・使いやすさをアップするホームページのJIS規格ポイント
→規格策定担当者から策定の経緯と対応のポイントを伺います
・千代田区のオリンピック・パラリンピック対応
→オリパラ担当者に対応内容を伺います
・ユニバーサルデザインの取り組み事例
→羽田国際線ターミナル事例他

(参加申し込み方法)
moshimoshi@i-d-sol.comもしくはFAX:03-6268-8029まで必要事項を記入の上お申し込みください。
※必要事項
氏名、企業名、部門名、連絡先電話番号、メールアドレス、懇親会への参加の有無(参加の方は当日会費1000円をお支払いください)

【お申込み、お問い合わせ先】
みんなでつくるまちづくり推進協議会(担当:松村)
TEL : 03-6268-8028
Mail: moshimoshi@i-d-sol.com

PDF版のご案内はこちらから>>>みんなでつくるまちづくり推進協議会第2回勉強会

異業種交流に関する意見交換会

異業種交流研修に関する意見交換会のご案内「複数の企業様が参加する異業種交流研修2015」の実施に先立ちまして、送り出し側である人材育成の責任者にお集まりいただきまして、「異業種交流に関する意見交換会」を開催いたします。
他社の人材育成担当者様と異業種交流という場について意見交換をしながら、人材育成や組織開発のヒントを持ち帰ることが可能です。また、本交換会終了後に、軽食付きの交流会を行いますので、併せてご参加ください。

主催:株式会社シナプス、株式会社インクルーシブデザイン・ソリューションズ
日時: 2015年 9月 11日 (金) 15:00-18:00
場所:インクルーシブデザイン・ソリューションズ 有楽町ワークショップセンター
         東京都千代田区有楽町1-6-6 小谷ビル2F 
対象:異業種交流型研修に前向きなご意見をお持ちの人事担当者様
定員:15社限定 ※定員になり次第締切とさせていただきます

参加費:無料 ※交流会のみ1,000円

内容

第一部:15:00-15:40 基調講演
「異業種交流が果たすスキル向上と組織活性化とは」
トヨタテクニカルディベロップメント株式会社
人事部 部付 SPE(シニアプロフェッショナルエキスパート) 佐野雅人氏

佐野部長写真佐野様は、トヨタGで、技術者の育成に長年携わり、思い込みの打破から違いを価値に変えること、これまでの問題解決能力に加え、問題発見能力を養うこと、多様性を受容したチームづくりなどを行って参りました。4月よりトヨタ自動車で、グループ再編による文化の融合、価値観や考え方の架け橋としてコーティネーターの役を担われてます。

1.トヨタグループの人材育成の課題
2.異業種交流における自社の取組例 (成功例と失敗例、その要員とは)
3.異業種交流で効果の出せるテーマ
マネジメント力・問題解決能力・ロジカルシンキング・ビルディング力・多様性受容 問いを立てる力・聴く力・咀嚼する力・伝える力・つなげる力・視点拡大・捨てる力
4.異業種交流の効果的な活用方法
5.どんな相手(企業)との異業種交流

第二部:15:40-16:40   グループディスカッション「現状共有」

第三部   16:50-17:50    テーマ別セッション「異業種交流に求めるもの」

交流会 18:00-19:30  交流会 (軽食代1,000円) 

お申し込みはこちらから>>>異業種交流研修

(お問い合わせ)
株式会社インクルーシブデザイン・ソリューションズ(担当:高山)
TEL:03-6268-8028
Mail:moshimoshi@i-d-sol.com

PDF版のご案内はこちらから>>>人事向け異業種交流会のご案内

異業種交流に関する意見交換会お申し込み

以下のフォームにご記入いただき、“送信”ボタンをクリックしてください。

または、同じ内容をメールにて
moshimoshi@i-d-sol.com
宛てにお送りください。

後日担当者より、お申込み完了のご連絡をお送りいたします。

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懇親会の参加 (必須)
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メッセージ本文

スペインの統合教育

現在のスペインでは、基本的にすべての子供たちの義務教育は統合教育です。スペインでは小、中学校あわせて8年間の一貫義務教育制になっています。以前は盲学校がスペイン国内5箇所にありました。1984年か5年ごろから、スペイン盲人協会の方針として、子供たちを公立、私立を問わず家から近い学校に通わせる事としました。
この統合教育のパイオニアとなったのがバスク州です。州政府が「教育は万人のためのものだ」という方針を明確に打ち出して、実行したからです。バスク州三県では全国に先駆けて、1984年に「視覚障害者リソースセンター」を開設しました。視覚障害児童を支える教員をチームとして配置するのですが、各教員は視覚障害児童が学ぶ学校に出向いて、点字の教科書の作成、学校への適応訓練等、児童が必要とする教育サービスを行います。一週間に一度の割合で各児童を支援します。この州政府の取り組みに盲人協会が合意し、政府に必要な材料を提供したのです。たとえば、点字教科書作成のために点字印刷機を提供する、白杖の使い方やルーペの使い方、パソコンの使い方を学ぶために盲人協会のリハビリテーション施設と器機、サービスとを提供するといった具合です。これは盲人協会にしかできないことで、まさにその特色をフル活用しています。現在はパソコン等のハイテク機器を使って教育を受ける必要がありますから、視覚障害者関連のパソコンのハードウェアやソフトウェアを盲人協会が提供しています。
たとえば、ビルバオ市のあるビスカヤ県のリソースセンターには、30人の専門家が働いています。3名は点訳専属、22名は教員で一人の教員が7名〜9名の生徒を受け持っています。それぞれの生徒が学ぶ学校を訪れて必要な支援を行うのです。最近は特に視覚障害者用パソコンソフトの習得を、盲人協会が主導で行うことが重要になってきました。また、白杖の使い方、学校内の移動、教師とのコミュニケーション、残っている視力の有効活用(これは全盲の生徒よりも弱視の生徒のほうが多いと言う事情からです)、このような支援を行っています。
ルーペやソフトウェアなどの必要な器機を、盲人協会が無償で貸し出しています。児童は義務教育の間は無償で必要なサービスを受けられます。必要であれば奨学金を申し込むこともできます。盲人協会が奨学金を出すのです。
このようなバスク州の取り組みは、徐々にスペイン国内に広がっていきました。しかし、州によって多少の違いがあります。バスク州では州政府がリソースセンターの必要な経費をすべて負担します。盲人協会は負担しません。たとえばリソースセンターの15人分を州政府が、残りの15人分を盲人協会が負担する、30人全部盲人協会が負担するというところもあります。これは州政府と盲人協会の各州支部との話し合いで、双方の負担率が決まります。
日本では、未だに熱意ある教師や教育委員会の個人的な努力で、統合教育が支えられています。このスペインの事例のように、ヨーロッパの国々では、まず「統合教育」の仕組みをつくります。そしてそれに必要なリソースセンターや教員といった、物的、人的な配置をします。そしてそれにかかる予算を計上します。このような組織だった取り組みが、実りある統合教育に必要なことだと思います。

次に大学のことですが、これは義務教育とはちょっと考え方が異なります。盲人協会では大学レベルの教育を受けようとする人たちは、「自立した大人」とみなします。だから州政府も盲人協会も最低限の支援しかしません。本人が白杖の使い方を教えてほしいと希望すれば、そのサービスを提供します。でも、義務教育児童のような方法での支援ではありません。18歳以上はもう成人ですから、ほかの障害のない成人たちと同じように、自分自身で自分自身のことを決めることが要求されます。奨学金や適応訓練と行ったサービスは受けられますが、義務教育のときとは扱い方が違います。
日本では、大学入試の時間延長が画一的に決まっていますが、スペインでは全く違います。自分が受けたい大学と、どんな形で試験を受けたいのか、どんな配慮をしてほしいのかを、自分で交渉して決めます。大学に入った後も同じで、教科書や授業で配られる資料、板書の文字など、すべて自分で各担当の教授と交渉して決めるのです。「大学生は大人である。大人であるということは、自分で働けるということ」を意味します。だから「自分のことは自分でする」という考え方が、視覚障害のあるなしに関わらず、貫かれています。日本よりも、個人の資質が大きく問われます。
スペイン盲人協会では、外国からスペインに来て勉強する視覚障害者に対しての対応も行っています。州政府の支援と盲人協会の支援両方とも受けられます。まず、盲人協会の支援について、奨学金とリハビリテーションは除外です。ハイテク機器の使い方などのサービスは外国人でも受けられます。そこがスペイン国民である成人の視覚障害者との違いです。州政府はほかの外国人と同じように最低限の支援を行います。それは「教育は万人のため」という方針が土台になっています。
盲人協会は外国人の子供たちには、スペイン国民の子供たちとまったく同じ支援とサービスを行います。でも成人は違います。成人は働くことができるとみなされるので、資金的な支援はしないのです。
(終わり)

失明から職業復帰までのプロセス

インタビューに答えてくださった、クラウディオさんを例に、盲人協会への入会から職業復帰に至るプロセスを書いてみます。
クラウディオ・コンゴストさんは、18歳のときに交通事故で失明しました。
「すべてを失ったような気がしましたよ」
と、当時を振り返ります。
スペイン盲人協会では、通常の視力の10%以下、もしくは視野の10%以下の人たちを「視覚障害者」と認定します。それよりも見える人は盲人協会のメンバーにはなれません。このような眼科分野の条件を満たす人だけが、盲人協会のサービスを受ける権利を持ちます。
盲人協会入会の第一歩は、協会専属の眼科検診を受けることから始まります。そこで「視覚障害」と認定を受けたクラウディオさんは、盲人協会への登録の手続きを行いました。まず、会員証の発行があります。これはクレジットカードぐらいの大きさで、本人の写真が貼られていて、点字と普通文字で会員番号が書かれているものです。次はいろいろなサービスのオリエンテーションがあります。
そこで、社会復帰をしたいと希望した彼は、バルセロナにある中途失明者のリハビリテーションセンターで、一年間社会復帰のための集中研修を受けます。歩行から料理、裁縫に至るまで、一人一部屋のホテルのようなところに一年間宿泊して、研修を受けたそうです。日本よりもかなり時間をかけた集中的なリハビリテーションです。ちょっと厳しいと思われる方もいらっしゃるかと思います。重要なことは、「本人が社会復帰を希望する」という意志を示さない限り、このリハビリテーションは受けられません。あくまで本人の意志が尊重され、本人も自分の意志で選んだ道だからこそ、一年間という長く厳しい訓練に耐えられるのです。
次に彼は、職業訓練を希望しました。その訓練を受けるために、ちょっとはなれたところに行ったそうです。でも今はその必要はありません。自分の住んでいるところで職業訓練が受けられます。彼はそこから紆余曲折があって、今のスペイン盲人協会に就職したそうです。1980年代は、それほど職業を見つけることは困難ではなかったそうです。でも今はもっと事情が厳しいと彼は言います。
(終わり)

宝くじ以外の職業状況

盲人協会の収入が増えたことで、視覚障害者にもっとたくさんの融資をしたり、サービスを向上させたりすることができるようになっていきました。この大きな収益のおかげで盲人協会は一つの会社であるだけでなく、視覚障害者のためにいろいろなサービスができる組織になりました。リハビリテーション、ソーシャルワークサービス、点字のIT技術サービス、弱視のためのサービスなどです。それまでは宝くじ販売員としてで働く視覚障害者がいただけだったのですが、この頃から視覚障害分野のエキスパートたちが、リハビリテーション分野から教育分野に至るまで、たくさん出て来るようになりました。1987年〜88年にかけて、教育・リハビリテーション・弱視のための施設がスペイン5箇所にできるまでになりました。
職業対策の一つとして、1989年、盲人協会はホールディングを設立しました。そこで視覚障害者を含むさまざまな障害者を雇用しました。経営は盲人協会です。具体的な職種としては、たとえばスペインでもかなり大手の清掃業務の仕事があります。警備業務、ホテルもあります。ホテルの経営者とフロント係は視覚障害者です。
数は少ないのですが、大学を出て違う仕事に就く視覚障害者も出てきています。しかし、民間企業で働く視覚障害者は、まだまだ数が少ないのが現状です。企業で障害者を雇うメリットはあります。たとえば、ある企業で35歳以下の女性の障害者を雇用すると、スペインの法律で社会保険料の5%だけを会社が払い、残りの95%は政府が払います。これは企業にとってはかなりのメリットです。しかしこのことが企業経営者になかなか理解されていません。盲人協会でも、企業に就職した視覚障害者には必要な機器、たとえば音声ソフト、画面拡大ソフトなどを会社に無償で貸与しています。スペインの企業で仕事を見つけるのは、なかなか難しいことです。
もちろん、盲人協会で違う仕事をする視覚障害者も出てきています。点字関係、主にIT技術関係です。それに、心理学者、ソーシャルワーカーなどもでてきています。以前はこういう仕事を目の見える人たちが行っていました。もちろん、目の見える人でないとできない仕事もあります。リハビリテーション関連です。歩行訓練士、視能訓練士などは完璧に目の見える人でないとできません。
視覚障害者に戻れば、弁護士や理学療法士(物理療法士)もいます。理学療法士は病院で働く人と、自分で開業している人とがいます。時期はわかりませんが、スペイン盲人協会は視覚障害者のための理学療法士の学校を設立しました。国内のほかの学校と比べても大変よい学校とのことです。毎年約25人ぐらいの生徒が学べる学校です。今は大学で健常者を対象にした理学療法士のコースができました。その意味では、この分野では盲人協会はパイオニアといえます。しかし、視覚障害者の理学療法士がたくさんいますが、それ以上に健常者の理学療法士が増えていて、この職業も目の見える人たちとの競争で、大変厳しい状況にあります。
(終わり)

盲人協会の宝くじ

「盲人協会の成り立ち」で、協会が国から正式認可を受けた時、宝くじの販売を、正式に視覚障害者専属の仕事として認可されたということをお話ししました。わかりやすく言えば、現在のみずほ銀行の宝くじ部門の業務を、盲人協会専属のビジネスとして行ってきたということです。
1984年にスペイン盲人協会は宝くじの番号を全国統一しました。このことは、盲人協会の収益増加に、とても重要な役割を果たすこととなります。それまでは各州ごとに違う桁数の番号の宝くじを売っていました。それを全国4桁の番号で統一し、これによって盲人協会はかなりの収益を上げられるようになりました。
盲人協会の宝くじは、毎日何名かの当選者がでます。当選番号は朝刊で告知されます。宝くじの販売は、1970年代までは盲人協会専属でしたが、1980年代に入りスペインに民主化の波が押し寄せてくると、盲人協会専属ではなくなりました。しかし、国民の中には「盲人協会の宝くじ」として、すっかり定着していましたし、盲人協会の幹部もほかの会社に負けないような経営努力をしました。その結果、今でも宝くじの収入は、盲人協会が一番です。その企業レベルは、スペイン国内でもかなり収益のよい優良企業の一つです。
スペインに行くと、どなたでも通りで宝くじを売っている視覚障害者の姿を見ることになるでしょう。日本ではすっかり姿が少なくなりましたが、小型の電話ボックスのようなキャビンが、街のあちこちに立っています。そこには「ONCE(国立スペイン盲人協会)」と書かれていて、その中で視覚障害者が宝くじを販売しています。一枚1ユーロです。
盲人協会の宝くじ収入は免税の対象です。そのことによって、盲人協会はそのお金をすべて視覚障害者のサービスに使うことができるようになりました。また、1988年に視覚障害以外の障害者、知的障害、肢体障害、聴覚障害などあらゆる障害のための基金を設立しました。盲人協会の収入の3パーセントの資金をこの基金に、47%を給料や建物維持等の経費に、そして残りの50%を視覚障害者のサービスに当てています。
盲人協会は全国で常時22,000人の宝くじ販売員を雇用しています。今はそのうちの半分は視覚障害以外の障害者です。現在宝くじを売る人の一ヶ月の収入は焼く1500ユーロ。クラウディオさんが若いころは90%以上の宝くじ販売員が視覚障害者でした。年々そのパーセンテージは減っています。とはいえ、盲人協会では宝くじ売りの仕事をしたいと希望すれば、明日にでも雇うことを実行しています。そういう機会はまだ保障されています。
(終わり)

 

スペイン盲人協会の成り立ち

国立スペイン盲人協会(ONCE)レポート

局は大学時代にスペイン語を専攻しました。たまたま聞いたスペイン語が超かっこいい響きだったからです。実は、ものすごーくミーハーなのであります。ことばを学んでみるとやっぱりそこに愛着がわいてきて、卒業旅行を皮切りに、小金がたまればスペインに行っています。結婚後も機会があれば、弱視の夫と二人でスペインを旅行します。気ままな個人旅行がわれら夫婦の旅のスタイルです。
2009年10月30日、旅行で訪れたスペイン北東部にあるビルバオ市で、国立スペイン盲人協会バスク州ビルバオ支部長の、クラウディオ・コンゴストさんにスペインの視覚障害者事情をいろいろと伺いました。それをご紹介します。バスク州はスペイン北東部、フランスとの国境に位置しています。一大工業地帯で、経済的にもスペインを支えています。
日本とは全く違うノリ、歴史、風土、文化を持つスペイン。盲人協会」だって、成り立ちや、形態、職業など、あっと驚くことがたくさんあります。世界的に見ても大変珍しい形態で、きっと何か参考になることがありそうです。何はともあれ、読み始める前にこれだけは、しっかりと心にインプットしてください。
『スペイン盲人協会は、盲人協会であると同時に、一つの企業である』

1.盲人協会の成り立ち
ほかのヨーロッパ諸国では、第二次世界大戦で失明軍人が大量にでたことから、国立の盲人協会の設立を政府に要求し、政府から資金的援助を受けることになりました。スペインの場合は、歴史的事情から独自の道のりをたどりました。1936年7月から1939年3月まで、国内で内戦が勃発しました。フランコ将軍が率いる軍事政権が勝利し、将軍が没する1975年まで、軍事独裁政権が続いたのです。この内線で多くの失明軍人を出すこととなりました。
1938年まで、盲人協会はそれぞれの自治区(自治区は17州あります)の小さな会でした。1938年に統合して一つの盲人協会をつくり、時のスペインの統治者であった独裁政権のフランコ将軍に、国立の盲人協会として認可してくれるように申し入れをしたのです。将軍はこれを受け入れ、1938年12月13日に国立スペイン盲人協会が設立されました。スペインの人口のほとんどがカトリック教徒です。12月13日は、盲人協会の守護神である聖ルシアの記念日に当たります。この日から現在に至るまで71年間存続しています。すべてのスペインの視覚障害者が一つの盲人協会の元に団結してきました。
内線直後のスペイン国内は国土が疲弊し、資金も底をついてしまったために、第二次世界大戦には参戦しませんでした。そんな状態ですから、視覚障害者に資金的援助をすることは、当時の政府にはできませんでした。そこで将軍は、国立盲人協会だけに宝くじの販売を、正式に視覚障害者専属の仕事として許可しました。「お金は出せない。仕事を与えるから、それで何とかやってくれ」ということです。
スペインの視覚障害者は、そのときから通りに出て宝くじを売っています。そして盲人協会は宝くじの収入で、自分たちのためのサービスを自分たちで行うようになっていったのです。当時の盲人協会は宝くじを売る視覚障害労働者の会社でしかありませんでしたが、自分たちで運営して、自分たちで稼いだお金を自分たちで使うという利点がありました。この形態は今も同じですが、当時の軍事政権の特徴として、盲人協会の役員を国が指名していました。1975年にフランコ将軍が没するまで、戦争によって失明した軍人や独裁政権の党員の盲人の中から指名したのです。そうして盲人協会は1982年まで、こんな具合に成長していきました。
フランコ将軍没後、スペインにも民主化の波が入ってきました。そして1982年、スペイン盲人協会内部で初めて民主的な全国レベルの選挙が行われました。初めて盲人自身が自分たちの協会の役員を選んだのです。
協会の役員には、視覚障害者の代表として政府と交渉するほかに、宝くじを売る企業の役員としての経営センスが求められます。つまり国立スペイン盲人協会は、盲人協会であると当時に、宝くじ販売を生業とする一企業でもあるのです。しかもその売り上げ・業績は、常にスペイン優良企業に入っているという成績です。これは世界的にも珍しい、盲人協会の形態です。
(終わり)

大爆笑!アテンドエピソード

弱視の夫と二人で台北に旅行した時のエピソード。
 
2012年ごろだったと思います。台北へのC航空利用のツアーを、日本の旅行会社で申し込みました。理由は単純で、価格が一番安かったからです。旅行会社にツアー申込をして、「二人とも弱視であること」を申告しました。そして、「航空会社に台北の空港でだけアテンド(飛行機を降りたところから、空港を出るまでの案内と誘導)をお願いしたいので、頼んでください」と旅行会社にお願いしました。
 
翌日旅行会社の方が、とても申し訳なさそうな声で電話連絡を下さいました。
 
「あのう…、航空会社にお話ししたところ、『アテンドは行きと帰りの空港セットになっており、それぞれで違う対応はできません。また、障害に関係なく車いすでの移動をしてもらう決まりになっています」とのお答えがきました。いかがなさいますか?」
どっひゃー、今どきまだこんなことってあるんだ!!20年前にタイムスリップしたというのが、私の正直な感想でした。しかし、しかしです!たまたま航空会社の担当者がいけてなくて、大きな勘違いという可能性だってあるかも?しれません。もう少し頑張ってみようと思い、次のようにお願いしました。
「航空会社にこう伝えてみていただけますか?『視覚障害者なので車いすは必要ないこと、二人とも弱視で人の後について歩けること、ゆえに係員一人のアテンドで十分なこと、日本の空港は何度も利用していてなれていること』、この4つです」
 
旅行会社の方は快く承知してくださいました。そう、私たちと旅行会社は、ツウカーなのです。みなさん、よーく考えてみてくださいな。わたしたちの希望は、航空会社にとっても、すごくよい条件ではありませんか?人員は一人だけでいいし、車いすなどの機材を使わずに済むのですから。仕事の量や負担が減ってお客様に喜ばれるなんで、ビジネス的には超ラッキーです!!
 
そして翌日、大爆笑の回答が返ってきたのです。
 
「航空会社から『私どものやり方に同意できなければアテンドはしません』との回答が来ました」
電話口で大爆笑なんて、局の品位にかかわるので必死でこらえ、次のようにお願いしました。
「それはわたしたちのニーズには合わないので、丁重にキャンセルしてください。くれぐれも丁重にでお願いしますね」
勿論、日本の航空会社のツアーに切り替えていただくことも忘れませんでした。電話を切るか切らないかでとうとう我慢が限界を超えてしまい、涙を流して大爆笑しちゃいました。
 
国際線は国内線に比べて選択肢がいろいろありますから、私が受けたいサービスを提供してくれる航空会社を、かなり自由に選べます。国内線のように、その国独自のサービスの考え方や障害者理解のレベルに縛られることもありません。
でも国際線は違います。まさにグローバルな競争なのです。そんな時代にこのサービスモデル、他国ながら心配しちゃいます。同じアジアの国として、日本の局の一人としてアドバイスしたくなります。
 
「もう少し落ち着いて!!ビジネスの基本に戻って考えようよ。誰がお客様?お客様のニーズにできるだけ合理的に応えるにはどういう仕組みづくりをする?」
 
ちなみに、旅行会社は大変良く私たちを理解して、航空会社と私たちの板挟みになりながらも、とても誠実に対応してくれたことを申し添えます。
 
ゆっくりでいいから、グローバル化の競争についてきてね。ぼーっとしてると置いて行っちゃうよー!!