宝くじ以外の職業状況

盲人協会の収入が増えたことで、視覚障害者にもっとたくさんの融資をしたり、サービスを向上させたりすることができるようになっていきました。この大きな収益のおかげで盲人協会は一つの会社であるだけでなく、視覚障害者のためにいろいろなサービスができる組織になりました。リハビリテーション、ソーシャルワークサービス、点字のIT技術サービス、弱視のためのサービスなどです。それまでは宝くじ販売員としてで働く視覚障害者がいただけだったのですが、この頃から視覚障害分野のエキスパートたちが、リハビリテーション分野から教育分野に至るまで、たくさん出て来るようになりました。1987年〜88年にかけて、教育・リハビリテーション・弱視のための施設がスペイン5箇所にできるまでになりました。
職業対策の一つとして、1989年、盲人協会はホールディングを設立しました。そこで視覚障害者を含むさまざまな障害者を雇用しました。経営は盲人協会です。具体的な職種としては、たとえばスペインでもかなり大手の清掃業務の仕事があります。警備業務、ホテルもあります。ホテルの経営者とフロント係は視覚障害者です。
数は少ないのですが、大学を出て違う仕事に就く視覚障害者も出てきています。しかし、民間企業で働く視覚障害者は、まだまだ数が少ないのが現状です。企業で障害者を雇うメリットはあります。たとえば、ある企業で35歳以下の女性の障害者を雇用すると、スペインの法律で社会保険料の5%だけを会社が払い、残りの95%は政府が払います。これは企業にとってはかなりのメリットです。しかしこのことが企業経営者になかなか理解されていません。盲人協会でも、企業に就職した視覚障害者には必要な機器、たとえば音声ソフト、画面拡大ソフトなどを会社に無償で貸与しています。スペインの企業で仕事を見つけるのは、なかなか難しいことです。
もちろん、盲人協会で違う仕事をする視覚障害者も出てきています。点字関係、主にIT技術関係です。それに、心理学者、ソーシャルワーカーなどもでてきています。以前はこういう仕事を目の見える人たちが行っていました。もちろん、目の見える人でないとできない仕事もあります。リハビリテーション関連です。歩行訓練士、視能訓練士などは完璧に目の見える人でないとできません。
視覚障害者に戻れば、弁護士や理学療法士(物理療法士)もいます。理学療法士は病院で働く人と、自分で開業している人とがいます。時期はわかりませんが、スペイン盲人協会は視覚障害者のための理学療法士の学校を設立しました。国内のほかの学校と比べても大変よい学校とのことです。毎年約25人ぐらいの生徒が学べる学校です。今は大学で健常者を対象にした理学療法士のコースができました。その意味では、この分野では盲人協会はパイオニアといえます。しかし、視覚障害者の理学療法士がたくさんいますが、それ以上に健常者の理学療法士が増えていて、この職業も目の見える人たちとの競争で、大変厳しい状況にあります。
(終わり)